第2章: 確率過程とフィルトレーション#
コインを何度も投げる場面を想像してください。投げるたびに、何が起こっているかが少しずつわかってきます。この章では、そうした単純な発想を正確な数学へと昇華させます。**確率過程 (stochastic processes)**は、時間とともにランダム性がどのように展開するかをモデル化し、**フィルトレーション (filtrations)**は各時点で何がわかっているかを追跡します。これらの概念は、マルチンゲール、ブラウン運動、確率微分積分への第一歩となります。
全体像#
確率過程とは、時間順に並べられた確率変数の列にすぎません。厄介なのは、任意の時点において観測者が実際に何を知っているのか、という点です。その答えとなるのが フィルトレーション (filtration) です。これは、時間の経過とともに可測となる事象の拡大族のことです。確率過程 (stochastic process) とフィルトレーションを合わせることで、その過程が時間の流れに従っているか、つまり現時点での知識に基づくと将来が依然として不確定であるかを確認できます。この性質を 適合性 (adaptedness) と呼び、後の動的モデルすべての静かな基盤となっています。
確率変数列:確率過程とは何か#
すでに学んだように、確率変数 (random variable) とは、偶然に依存して値が決まる数のことです。その列を時間順に並べたもの、それが 離散時間確率過程 (discrete-time stochastic process) です。映画を想像してみてください。フレーム0ではあるランダムな結果が、フレーム1では別の結果が、フレーム2ではさらに別の結果が、という具合に次々と現れていきます。
もう少し形式的に述べます。確率空間
ここで各
離散時間確率過程 (discrete-time stochastic process): 同じ確率空間上で定義され、非負整数の時間ステップで番号付けられた確率変数の列
のこと。
この過程は二変数関数
例1 – 公平なコイン投げの繰り返し。